| まにら新聞より
ビサヤ地方セブ州オスロブ町でバン型乗用車が街路樹に激突し、山形県からの観光客ら日本人10人が死傷した事故で、国家警察オスロブ署は23日、運転手のギリエルモ・ヘリア容疑者(57)を業務上過失致死傷、器物損壊両容疑で送検した。しかし、死亡した男性1人を除く日本人被害者9人が、正式な被害届を同署に出していないことなどから、不起訴や公訴棄却の可能性がある。
調べでは、20日午後3時すぎ、ヘリア容疑者運転のバン型乗用車が街路樹に激突。乗っていた日本人男女10人のうち、市村裕美さん(59)=山形県=が死亡し、残り9人も重軽傷を負った。オスロブ署は生存者らの話などから、原因を居眠り運転と断定して同容疑者を送検した。
しかし、今後始まる検察調べでは、日本人生存者9人や死亡した市村さんの遺族から、正式な被害届、被害時の状況を詳述した宣誓供述書が提出されていないことから、不起訴または起訴猶予となる可能性がある。
これは、被害者証言、宣誓供述書なしでは、ヘリア容疑者の「ハンドルが利かなくなった」という主張を覆し、「居眠り運転」と断定した警察の捜査結果を裏付けることが困難なため。
仮に起訴に至っても、日本人生存者9人のうち?山形県から来比した8人は、再来比できないなどの理由で法廷証言しない?残るセブ州在住の日本人男性(54)は、同容疑者の娘と親交があることから、同容疑者に不利な証言を避ける??などの恐れがある。この場合、やはり容疑者側の主張を崩すことができず、証拠不十分で公訴棄却または無罪となる可能性が高い。
オスロブ署のカストロ署長も、これら今後の成り行きを予想して、マニラ新聞の電話取材に「(被害時の状況などに関する)宣誓供述書は(訴追のために)非常に重要。日本人生存者らに提出を求めたが、早く日本へ帰国したいなどの理由で実現しなかった」と悔しさをにじませた。
フィリピンの刑事裁判制度は、被害者救済を重視する側面が強く、殺人事件などの判決には被害者、遺族に対する補償金支払いが付記される。逆に、被害者側が被害届や告訴を取り下げると、「公判を続ける利益なし」と判断され、公訴棄却で裁判が終わるケースが少なくない。このため、警察、検察の捜査では、被害届、宣誓供述書の確保が重要な意味を持っている。
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