![](./icon/kenken.gif) | 2005/11/27(Sun) 07:56:06 編集(投稿者)
「僕も8時に待ち合わせなんだ。まだ少し時間があるね。良かったら何か飲み物でもご馳走させてくれないかな?」といってバーの方に目線を向けた。 彼女は一瞬考えたようだったが小さくあごを引いた。
(中略)
僕は差し出された彼女の手を見て、グラスで濡れた手をわざとおどけて見せてズボンで手をぬぐった。 彼女の小さくてなめらかな手に触れた瞬間何故かビクン!と電気のようなショックを受けた気がした。 心臓の鼓動が高鳴るのがわかる。
(中略)
彼女はダバオではピンクコーラルと言う8人組みのバンドでバックコーラスを担当し、べニューやマルコポーロと言うホテルのラウンジで歌を歌っているらしい。 それが韓国人のプロモーターの目にとまり、このホテルで企画されているショーに誘われたとのことだ。
(中略)
「じゃあ、明日また会えるかもしれないね。」 「そうね。もっとお話聞きたかったんだけど私そろそろ行かないと。とても楽しかったわ。」 といって、彼女はスツールからおりようとした。 「いや、いきなり誘って失礼した。」「今度誘う時はバロンタガログを着てからにするよ。」 「それじゃ私もドレスを着てこないと。」「おいしいカクテルをありがとう。」 「こちらこそ。それじゃ、この話がまとまる事を期待しているよ。そうすればまた君に会えるかもしれないからね。」 「ありがとう。私もそうなる事を望んでいるわ。」 私はわざと少し困惑した表情して聞いてみた。 「期待しているのは話がまとまる事?それとも僕と会える事?」 彼女は一旦身体をおなかを抱えるように折り曲げすぐに戻し、顔の前を被ったサラサラの長い髪を後にすくい上げながら笑顔で答えた。 「面白い人ね。」「どちらもよ。」 彼女を帰したくない気持ちが心を占領しそうになったが、彼女は帰りたいという意思をはっきり表明しているのだ、しつこくするわけには行かない。 「幸運を!」 「あなたも」 「バイバイ」 たった今さっき知り合ったばかりの彼女が去って行く姿をみながら、このままもう会えないかもしれないという事に気が付いた次の瞬間心に空虚な部分が出来たような気分になった。 もっと、彼女の事が知りたい。そう思った時には彼女はもう二度と会えないかもしれないところまで行ってしまっていた。
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