| 1月29日のマニラ新聞から 邦人女性拉致 国家警察からは非難が上がる一方、恐喝した経験があると白状するなど捜査機関の実情浮き彫りに
国家警察本部で勤務する警官(記事の内容とは一切関係ありません)=首都圏ケソン市で27日写す
司法省直属の捜査機関、国家捜査局(NBI)幹部らが日本人女性(33)=滋賀県出身=を拉致し、身代金600万ペソを受け取ったとされる事件。トップが更迭され、地元テレビや新聞で連日報道されているが、同じ捜査機関の警官らはどう見ているのか。匿名を条件に何人かに率直な話を聞いてみると、「市民を守る捜査機関にあるまじき行為」と非難が相次ぐ一方、「NBIに限ったことではなく、国家警察や入国管理局にも汚職体質はまん延している」「恐喝ぐらい自分もやったことがある」と白状する声も出て、汚れた金まみれの実態が一部、警官自身の口から明らかになった。
首都圏ケソン市の国家警察本部犯罪捜査隊(CIDG)に所属する初級巡査部長(44)は勤続19年のベテラン。今回の事件について「NBI内部に(拉致事件のような)不正行為をするグループは存在する。ただ今回は額が大きすぎた。公にされないよううまくやるべきだった」と指摘した。
同巡査部長自身も外国人から現金を受け取ったことがある。マニラ市で2010年、韓国人男性の逃亡犯を逮捕したが、「金を払うから連れて行かないでくれ」と懇願され、現金4万ペソを受け取って釈放したという。同巡査部長は「私が要求したのではない。韓国人の方から自主的に申し出たのだ」と釈明した。
首都圏警察南部本部の3級巡査部長(38)はこれまで、日本人男性も含め5人程度から恐喝したことがあるという。「公共の場での喫煙を注意して現金を巻き上げたこともある。本部に事件として正式に伝わる前じゃなきゃできない。私の階級でやるぐらいだから幹部連中もやっているよ」と語るとともに、検察局や裁判所も同様の実情があると話した。
2人とも警察による恐喝については、・給与が低い・事件現場に向かう際にガソリン代を自腹で賄うなど捜査費用が不十分・・など待遇面の劣悪さが原因と説明した。
一方、別の警官らからは「自分はそんな悪事に手を染めたことはない。事件が本当なら比のイメージは低下し、NBI幹部らは適切な手続きに従って処罰されるべき」「額の問題ではなく、道徳的に許されることではない」と糾弾する声も上がった。
NBIと同じ司法省管轄の入国管理局職員(47)は「NBI側は否定しているが、事件は本当だろう。拉致された日本人女性に多額の現金があったためだ。金を持っている外国人はこの国ではリスクを伴うことを認識すべきだ」と、冷静な意見を述べた。
NBIの不正疑惑は07年にも起きた。自動指紋照合システム(AFIS)導入に絡み、ワイココ元NBI局長ら元幹部が、福岡市の電気工事業大手企業から高級ゴルフクラブセット2組(総額約96万2千円)などの利益供与を受けた疑惑が浮上した。
[ 1138字|2012.1.29||社会 ] [ 2012年1月29日のマニラ新聞 ] 社会 邦人女性拉致 [ 1138字|2012.1.29 | ]
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