| 2005/12/10(Sat) 00:04:22 編集(投稿者)
そのときふとその中の一人の女性に目が止まった、遠くて顔までは良く見えないが、白いノースリーブのイブニングドレスを着て手にはグラスを持っている。 「ひょっとして?」 自分の心臓の鼓動が早くなるのがわかる。
中略
数人の客がテラスに駆け寄り、飛んでいった帽子が風で沖に流されている事を皆に伝えている。 私もテラスに近付き海と帽子の様子を確かめた。海面までは5〜6mあり、水深は20〜30cm位に見える。ここからは降りられないし、この浅さでは船も入れない。海にいる漁師に取らせればダイヤが戻る保障はない。
すぐに樫本さんを探し尋ねた。 「一人乗りのジェットスキーはありますか?」 樫本さんはすぐに私の言っている意味がわかったらしく 「ええマリンショップにレンタル用のがありますが潮が低いのでこの状態で出せるかどうか。」 「大丈夫だと思います。ショップには誰か船を出すのを手伝いってくれるスタッフはいますか?」 「すぐ手配します。でも着替えていたら間に合いますか?」 樫本さんは私のスーツ姿を見ながら言った 「いえ、このままで大丈夫です。」 上着を脱ぎマリテスに渡す。 樫本さんに指示を受けたスタッフと一緒にマリンショップへ急いだ、ショップ前にキャリーに乗せた一人乗りのジェットスキーをスタッフが運び出す。しかし潮が高くなっておらず水深は30cmもない。 スタッフは無理だと言ってジェットスキーにダメージが残るのを嫌がっているようだが他に方法はない。 二人乗りのジェットスキーでは重量があるので、船が浮くだけ水位のあるところまでは簡単には運べないし、滑走していない時にはこの水深では船の下部が海底にあたってしまう。
バンカボートはもちろん出せないし、沖に停泊してある船では乗り込むまでに時間がかかりすぎるうえに帽子が流されている浅瀬にも入れない。
二人のスタッフに水がある所まで運ばせ、私はスーツのままはだしでジェットスキーの後部に片足を乗せた、ジェットポンプ下のアンダーカバーがゴツンと海底にあたる。 一人のスタッフが無理だと繰り返すが私は構わずもう一方の足を後方に伸ばしバランスを取りながらハンドルを落としたまま掴みセルモーターを回す。 ブルンと一発でエンジンがかかり、同時に一気に進みだす、私はハンドルを持ち上げ両足を揃え沖に向かいすぐに帽子が流された方行に向かった。
中略
帽子にブローチがついていることを確認し岸に向かった。
岸に近付き浅瀬に入ると砂浜の5m程手前までアクセルを緩めずスピードを落とさないまま突っ込みエンジンを止める。ジェトスキーは滑降状態のまま浅瀬をクリアーしそのまま砂浜を登り停止した。
さっきまで心配顔で見ていたスタッフが笑顔で近付いて来た。 樫本さんも笑顔で待っている。私は樫本さんにジェットスキーを借りたお礼を言い、帽子を渡し 「服が濡れてしまったのでこのまま部屋に戻ります。ご婦人に渡していただけますか?」 とお願いした。樫本さんは 「上着と靴はスタッフに届けさせます。そのときに濡れた服を渡していただければ明朝までにクリーニングさせます。他にも何か必要な物がありましたら私に直接ご連絡くだい。」 といってバスタオルを差し出す。 「ありがとうございます。それでは早速ですが、サンダルが有れば貸して頂きたいのですが。」 片足が腿まで濡れたパンツからは裸足の足が剥き出しになっていた。
部屋に戻り熱いシャワーを浴びバスローブを羽織る。 ミニバーからサンミゲールを取り出し オーシャンビューのベランダにでる。 少し強めの風が心地よく火照った身体を冷やす。
ピンポーン ドアベルが鳴った。スタッフが上着を届けに来たのだろう。 ドアスコープでホテルスタッフがいる事を確認しドアのロックをはずしノブを押す、「どうぞ」といってドアを開くと入ってきたのはマリテスだった。彼女は後ろ手にドアを閉じると声を低くして 「マネージャーが『スタッフに上着を届けさせるから』と言ったんだけどポケットに何か入っているし、任せて何か無くなったら困るから私も一緒に来たの。」
|